大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和32(オ)515 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人弁護士青柳虎之助、同河村泰三の上告理由第一点ないし第三点につい

て。

原判決の引用した第一審判決は用語いささか明確を欠くが、その趣旨とするとこ

ろは、帰するところ、次の如きものであると理解される。すなわち、昭和二〇年暮

頃、自己所有に係りし本件土地、家屋を上告人に賃貸して北海道に移住した被上告

人は、同二二年春名古屋市に来り、右土地家屋を代金一五万円で上告人に売却する

と同時に被上告人において五年内に帰名居住の場合には右同一代金を以て上告人か

ら右物件を買戻し得る等の契約を締結し、登記簿上は依然被上告人名義のままにし

ておいたが、その後食糧事情好転等の判示事情の変化に伴い帰名の意向を有するに

至つた折柄、昭和二六年六、七月、それまでに多額の負債を生じた上告人の為め、

その整理の掌に当つていた訴外Dらから、右土地家屋の所有名義人であり且つ上告

人と従兄弟の関係にある被上告人にも右整理に協力すべく呼びかけられ名古屋市に

帰来した被上告人は、右不動産につき買戻方の交渉があつたので、これを好都合と

し、その頃上告人との間に前示と同一代金を以て買戻しの合意をなしたこと、そし

て同時に判示のような事情があつたので所論乙第一号証の契約書を作成して期間を

二年とし本件家屋を上告人に賃貸する旨判示内容の賃貸借契約を締結したことを認

定しているのであり、その挙示の証拠並びに原判決の附加した証拠によれば如上認

定は首肯できないわけのものではない。してみれば叙上一連の取引は所論の事情を

斟酌しても特段に異常な契約とは認められないし、また前示乙一号証の契約が所論

の云うように仮装のものとも認められず、更にまた乙第五号証の一、二に関する所

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論のような事情もなかつたことが窺い知り得られるのであり、そしてまた原判決は

本件土地家屋の買戻しはその時の合意に基ずくものだと云つているのであつて、所

論のような買戻権の行使を云為しているものでもない。以上を要するに叙上の認定

判示に所論の違法は認められないのである。所論はひつきよう原審の裁量に属する

事実認定を非難するか、或は右判決の趣旨を正解しない結果に外ならないものであ

つて、すべて採るを得ない。

同第四点について。

しかし右第一審判決判示のような事情の下においてなされた所論更新拒絶の申入

はいわゆる正当の事由ある場合に該当するものだとした原判決の判断は当裁判所も

これを正当として是認する。所論は独自の見解というの外はない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い裁判官全員の一致で主文のとおり

判決する。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 下 飯 坂 潤 夫

裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官 入 江 俊 郎

裁判官 高 木 常 七

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